ある研究者の日々に見た再生医療の光
私の朝は、顕微鏡を覗き込むことから始まる。シャーレの中でキラキラと輝く小さな細胞たち。これが、いつか誰かの失われた光を取り戻すかもしれない網膜の細胞になると想像すると、自然と身が引き締まる。私は大学の研究室で、iPS細胞を使った再生医療の研究に携わっている。私たちのチームが目指しているのは、遺伝性の網膜疾患によって視力を失った患者さんのための治療法を確立することだ。患者さん自身の血液からiPS細胞を作り、それを網膜の細胞へと育て上げ、最終的には移植可能なシート状の組織にする。文章にすれば数行だが、そこに至るまでには気の遠くなるような試行錯誤がある。細胞がうまく分化してくれなかったり、培養中に細菌が混入してしまったり、失敗は日常茶飯事だ。そのたびに落胆し、自分の無力さを感じることもある。しかし、研究室の壁に貼られた「一人の患者さんのために」という言葉を見ると、再び立ち上がることができる。先日、私たちの研究について話を聞きたいと、ある患者さんのご家族が研究室を訪ねてきた。まだ幼い息子さんが、将来失明する可能性のある病気を抱えているという。お母さんは涙ながらに語った。「先生たちの研究だけが、私たち家族の希望なんです」。その言葉の重さに、私は胸が詰まる思いだった。私たちの研究は、決して実験室の中だけで完結しているのではない。その向こうには、切実な思いで待っている人々がいる。そのことを改めて心に刻んだ一日だった。まだ乗り越えるべき壁は高く、実用化までの道のりは長い。それでも私は、このシャーレの中の小さな光が、いつか大きな希望の光となって患者さんの元へ届く日を信じて、明日もまた顕微鏡を覗き込むだろう。